消化器外科専門医の視点から:叶井俊太郎氏 末期膵癌「余命半年」

医学

画宣伝プロデューサーを務める叶井俊太郎氏が膵癌末期で余命半年であることが反響を呼んでいるというニュースがありました。

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膵癌で苦しむ方が少しでも少なくなることを願い、膵癌について少しでもお伝えできればと思いこのブログを書かせて頂きます。

私は消化器外科専門医で、これまで膵癌の患者様の診療に関わってきた経験があります。

膵癌は最も治りにくい癌(難治癌)の一つであり、最近は様々な癌治療が急速に発展していますが、未だに5年生存率10%程度です。

膵癌と診断された方が5年後に生きている可能性は10%、10人に9人は5年間生きることができないということです。

膵癌は症状が現れにくい癌で、みつかった時点で手術できる患者様は20%程度しかいません。

つまり80%の方が手術もできないほど進行してみつかります。

さらに膵癌は徐々に増加しており、日本人では死亡数第4位の癌です。

叶井俊太郎氏が膵癌末期であり、余命半年と医師から宣告されたということはおそらくすでに他の臓器に転移があるといったStage4の段階であることが予想されます。

膵癌の症状はなに?

先ほども述べましたが、膵癌は早期発見が難しい理由として症状が現れにくい病気です。

症状としては腹痛、背部痛、黄疸、体重減少、食欲低下などがあります。

膵癌が大きくなり、周りの神経まで浸潤すれば腹痛や背部痛を引き起こし、膵臓の近くにある胆管というところまで浸潤して胆管が狭くなれば黄疸がでてきます。

また、膵臓の太い膵管を塞げば膵炎を引き起こし、腹痛や背部痛があります。

つまり症状がでたときにはすでに進行している可能性が高いのです。

膵癌を早くみつけるためには?

膵癌は世界的にも研究が盛んですが、最近さまざまな癌で有効性が示された免疫治療も効果がまだ不十分なのが現状です。

そのため、早期発見が重要とされています。

早期発見できれば、進行癌ではなく早期癌の状態で治療することができ、Stage IAの5年生存率は約70%と報告があります。

では膵癌の可能性を疑うサインはなにがあるのでしょう?

腫瘍マーカー (CA19-9・Span-1・DUPAN-2・CEAなど)が高い

糖尿病が発症あるいは糖尿病の急激な悪化

採血で膵酵素(膵臓アミラーゼ:Amy)が高い

膵癌の症状を認める

・家族が膵癌である、など

代表的なものとしてはこれらがあります。

もし、このようなサインがあった場合は膵癌の可能性を除外するためにも検査をした方がよいと思われます。

最近では家族性膵癌も注目されています。

ご家族が膵癌である場合は膵癌を発症するリスクも高くなると報告されていますので、気になれば専門医に相談することもできます。

膵癌の診断するための検査は?

おもに、CTやお腹のエコー、MRIの検査でみつけることができますが、最近は超音波内視鏡検査も行います。

CTやエコーでは50%しか見つけることができないという報告もあります。

まだ小さい膵癌の場合は検査でも見つからない場合がありますので、先ほど述べたようなサインに注意すること、さらに定期的な検査を行うことが大事です。

膵癌の治療は?

おもに4つです。

  • 手術
  • 抗癌剤治療
  • 放射線治療
  • 緩和治療

早期に見つかれば手術ができるため、その場合は手術を行います。

手術を行ったとしても膵癌は再発するリスクも高いので、抗癌剤の治療も推奨されています。

膵癌の転移がなく、局所にとどまる場合やまわりに重要な臓器や血管がない場合は放射線治療を行う場合もあります。

ただし、抗癌剤の治療はやはり副作用もあり、継続するためには副作用をいかにコントロールできるかも大事になってきます。

緩和治療は癌による苦痛を和らげるための治療で、医療用の麻薬や吐き気止め等を使います。

患者様から聞いたことがありますが、わらにもすがる思いで医学的根拠がない民間療法(水やサプリ、温熱療法など)を選択する方もいらっしゃいます(そこにつけこんでくることもあるようです)。

免疫療法で長期に生存できた症例はありますが、医学的な根拠がない民間療法で長く生きることができた場合はおそらくそれをしなくても長く生きたのではないかと個人的に思っています。

膵癌についてあまり知らない方、膵癌を早期発見したい方の参考に少しでもなれば幸いです。

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