「チャーハン症候群」という言葉をご存じでしょうか?
チャーハンが大好きな私も知りませんでした。
「5日前のパスタを食べたあとに20歳の学生が亡くなった」と報告に対して医学博士がコメントしたことで再注目されたようです。
「fried rice syndrome」という言葉が海外のSNSで話題になっており、日本語で「チャーハン症候群」と呼びます。
しかし、チャーハンだけでなくスパゲッティや焼きそば、ピザなどでも起こる食中毒であるため、決して人ごとではない病気として認識する必要があります。
今回、「チャーハン症候群」について医師の観点からまとめましたので、読んでいただけたら幸いです。
「チャーハン症候群」が注目された報告とは?
今回「チャーハン症候群」が注目されるきっかけとなった報告について経過をまとめました。
引用:Naranjo M, Denayer S, Botteldoorn N, et al. Sudden death of a young adult associated with bacillus cereus food poisoning▿. J Clin Microbiol. 2011;49(12):4379-4381.
20歳男性
① 5日前にトマトソースのスパゲッティを食べた
② その後、残ったスパゲッティを常温で放置
③ 当日スパゲッティを食べる前に電子レンジであたため直して食べた
④ スパゲッティを食べた30分以内に頭痛、腹痛、吐き気が出現
⑤ その後、数時間嘔吐を繰り返した
⑥ 夜になると水溶性の下痢がでてきた
⑦ 治療はうけず水だけのんでいた
⑧ 就寝
⑨ 起床しないため確認すると、死亡していた
20歳男性の診断は「セレウス菌による感染性腸炎(嘔吐型)」、死因は「血管内脱水による多臓器不全」と考えます。
セレウス菌によって腸炎が起こり、それによる下痢と嘔吐で重度の脱水
→脱水によって肝臓や腎臓などの重要な臓器の臓器不全がおこったことが予想されます。
では「チャーハン症候群」とは何が原因で起こるのでしょうか?
チャーハン症候群とは?どんな症状があるの?
「チャーハン症候群=セレウス菌による腸炎」です。
お米や小麦などの穀物類で作ったチャーハン、スパゲッティ、焼きそば、ピザなどが原因で起こることが多いです。
下痢型と嘔吐型がありますが、下痢も嘔吐も合併することもあります。
食事して30分以降に発症しますが、発症は10時間以上経過してからおこることもあります。
嘔吐型は30分~5時間、下痢型は6時間から15時間で発症するとされています。
死亡例は稀ですが、免疫が低下している方(免疫抑制剤内服中、血液の病気や抗癌剤治療で白血球が減少している方など)では要注意で重症化するリスク、最悪の場合死にいたってしまう可能性があります。
チャーハン症候群の治療法は?
根本的な治療はありません。
下痢や嘔吐に対する治療がメインになり、脱水の補正、吐き気止め、整腸剤内服を行います。
特に脱水に注意であるため、OS-1などでの水分補給が重要です。
口から水分摂取できない場合は病院を受診することを強くすすめます。
重度な脱水がある場合は、点滴による脱水の補正が必要です。
チャーハン症候群の予防法は?
重要なことは、「セレウス菌を増殖させない」ことです。
セレウス菌は熱に強い芽胞をつくります。
芽胞をつくると、90℃60 分で加熱しても死滅しません。
さらに芽胞が作る毒素はさらに熱に強く126℃90分でも毒素は機能を失いません。
165℃15秒の加熱が推奨されています。
そのため、「電子レンジでの再加熱でセレウス菌は死滅できない可能性がある」ことに注意です。
① 食材はよく洗う
② 調理した食材はできるだけ早く食べる
③ 保存する場合は冷蔵庫にいれておく
④ スパゲッティ、焼きめし、焼きそばなど小麦や米をつかった料理では特に注意する、できれば翌日には食べない
⑤ 2時間以上放置した場合、165℃15秒の加熱する
以上のことに注意して頂き、皆様「チャーハン症候群」にならないようお気をつけください。
なってしまった場合は脱水に注意で、水を口からの飲むことができない場合は病院に相談するようにされてください。
この記事が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
引用
東京都保健医療局「セレウス菌」
国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/alphabet/aids/392-encyclopedia/427-cereus-intro.html
MDLinx 11月3日付記事
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