外科医監修★けがをしたとき最初にすべきこと

医学

社畜夫である私は外科医で救急外来で勤務するときに怪我をして受診される方を診察する機会がよくあります。

怪我をしたときの適切な対応、どういう時に救急病院を受診するべきか、など外来でお話しさせて頂く内容についてまとめてみました。

怪我をした直後の適切な対応は?

怪我をしたときに土などで汚れた場合はまず水道水でしっかり洗うことが重要です。

「まずは消毒」というイメージがあるかもしれませんが、現在は消毒よりも水道水でしっかり洗うことがおすすめされています。

理由は以下です。

  • 消毒は傷がついた組織にやさしくない (消毒は細胞にとって障害性がある)
  • 大量の水で洗うことで傷にはいった細菌の数が減る (水の量と細菌の数は逆相関がある=大量の水で洗えば洗うほど細菌の数は減る=という報告あり)

出血が止まらない場合は以下の対応が必要です。

  • 出血したところを垂直に圧迫する
  • 怪我したところが手や足の場合は心臓よりも高い位置にする

出血したところをまず圧迫することが重要です。圧迫は強くする必要性はなく軽くおさえる程度で十分です。

余談ですが、手術中は圧迫している間に止血するためにどの方法で止血するのが適切かを考えます。

ドラマではよく「血管をしばる」という場面がでてきて、時折血管を縛って受診される方もいます。

個人的な印象ですが、強く縛りすぎたり、位置が適切ではなかったりする場合が多いです。

大量の出血がある場合には必要ですが、その際は怪我をした場所よりも心臓に近い比較的太い場所を圧迫します。

ただし、あまり血管の走行について詳しくなく、適切な場所がどこかはっきりわからない場合があったり、怪我をして動揺したりする場合があったりすると思われますので、「まずは出血している場所を圧迫すること」が大切です。

どういう時に救急病院を受診した方がよいか?

  • 出血がとまらない場合

これは病院で縫合や止血剤をつかう必要があります。

大量出血により命が危険にさらされるのは1L以上とされています。体重によって異なります。

  • 傷だけでなく骨折もありそうな場合

レントゲンやCTで評価する必要があります。骨が露出する傷、骨折を伴い骨も露出する傷は命を脅かす感染症につながる可能性があるため、夜間・休日でも病院を受診してください。

  • 強い衝撃を伴う場合

骨折はもちろんお腹や頭に強い衝撃を伴う場合はCTやエコーでみえない出血が隠れている場合もあります。

  • 深い傷である場合

専門的には皮膚の下の皮下脂肪がみえるときや、それよりも深い傷のときは縫合等の処置が必要です。

傷が深い場合は感染のリスクが高くなり、さらに傷の回復も遅くなるため医師の診察が必要です。

  • 汚れが激しい傷の場合

大量の水だけでは汚れを除くことができない場合、麻酔をしたうえで汚れを除くことが必要な場合があります。

また、破傷風の予防注射を打つこともあります。

抜糸はいつ?

形成外科医の先生がいて、子どもではない限り基本的には抜糸が必要になります。

汚れ(土など)がついた傷は感染のリスクがあるため、抜糸が必要のない縫合は選択する機会は少ないです。

抜糸の時期は縫合する場所によって異なります。

  • 基本的には7日間
  • 緊張がかかる場所(関節の近くなど)は7-10日間
  • 顔などよく見えるところは5-7日間

多くは7日間で抜糸することが多いですが、時期によって長所と短所があります。

抜糸までの期間が長い

メリット:傷が治癒する(くっつく)まで十分な時間を確保できる

デメリット:糸自体が感染のリスクになることがある・傷が残りやすくなる

抜糸までの時間が短い

メリット:傷が残りにくい

デメリット:傷が治癒(くっつく)する前に抜糸することで傷がひらく可能性がある

あくまで傷の場所や傷の経過をみながら医師が判断して抜糸を決めます。

上記のメリット・デメリットを十分に理解したうえであれば、医師に提案してもよいと思います。

いつからシャワーをあびてもいいの?

縫合するメリットとして、「細菌がはいらないようにする」ことがあります。

縫合して48時間で細菌がはいらないバリアができるとされていますので、それ以降はシャワーを浴びてもよいと外来で話しています。

もしガーゼが濡れた場合は必ず濡れたガーゼを交換することをおすすめします。

傷がきれいに治るためのポイントは?

縫合する方法はもちろんですが、傷を縫った後は傷が感染しないことが一番です。

感染した場合は傷の跡が残りやすくなり、傷がなおるまでの時間も長くなります。

以下の症状がでてきた場合は抜糸の日ではなく、その前にはやめに病院を受診してください。

  • 多くの膿がでている (ごく少量なら問題なく治ることも多いです)
  • 日ごとに傷の痛みが増す
  • 縫合した場所が裂けている

傷がはやく・きれいになおるための原則は2点です。

① 清潔にすること

② 保湿すること

けがした場所は毎日水道水あるいは消毒し、清潔を保ったうえで軟膏(ゲンタシン軟膏やワセリンなど)をつけることをおすすめしています。

これは縫合する必要性がない傷でも同じ対応をおすすめしますので、ゲンタシン軟膏は家に置いておくと安心かもしれませんね。ゲンタシン軟膏は市販では買えないため、ドルマイシン軟膏などが同じように使えます。1本あれば充分と思います。


簡単にポイントだけをまとめてみました。怪我をしたときに困った場合、処置が必要かよくわからない場合はまず「救急医療電話相談」に相談することをおすすめします。

その日の当番の病院や外科医がいる病院を教えてくれます。

少しでも怪我をした際の役に立てば幸いです。

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